妻のがん体験記【あるあるその9】手術当日③

2022年2月21日

おはようございます。月曜日担当のホーリーです。

前回までのお話はこちらから

 

食事を終え、待合室に戻るとまた無言の時間が続きました。

 

恐ろしく遅い、時計の針の進み具合を何度も確認しながら、ただただその時が来るのを待ちました。

 

そして、手術開始から2時間を過ぎた頃、看護師の一人が私たちの元へ現れ、手術は無事終わったこと、リンパ節に転移はなく、予定通り温存術が行われたということが告げられました。

 

その瞬間の感覚を例えると、今まで極端に狭まっていた視界が、急に開けたような。暗い、小さな穴からようやく抜け出せた、そんな感じでした。安堵の声を上げている義父母の顔も、その横にいて平静を装って無表情でいる息子の顔も、その時になってはっきりと認識することが出来ました。

 

本当に、あの時ほど自分の中の弱さを思い知らされたことはありませんでした。それと同時に、弱さを抱えたままでも逃げずに向き合い続ける、それこそががんと戦う人を支えるために出来る唯一のことなんだと、すごく分かった気がします。

 

麻酔がある程度醒めてから病室に戻されることになるらしく、あと1時間程は待つと聞き、息子は煙草を吸いに外へ向かい、義父母も病院内の探索に向かいました。皆、心の荷が降りた感覚だったのでしょう。

 

妻が病室に戻ってきた時は、まだ意識はぼんやりとしていて、ただその顔は明らかに何かから解放されたような顔をしていたこと記憶があります。

 

その様子を確認すると、息子と義父母は早々に帰っていきました。私もしばらく寄り添っていましたが、休ませてあげるほうがいいなと思い、その日は病室を離れました。

 

帰りの車の中で、安堵に浸りかけたその時、そんな自分を戒めるようかの様に、ふとよみがえってきた記憶がありました。

 

妻は、今回の施術の前にも、別の病気により内視鏡手術を受けており、その時の体力の回復には相当な時間を要しました。開腹手術ではないからすぐに元の生活に戻れるんじゃないかという、その考えがいかに甘いかを突きつけられた思いでした。

 

歩くこともままならず、病院の廊下を壁伝いに歩く妻の辛そうな姿が目に焼き付いていて、ましてや今回は一部切除とはいえ体にメスを入れている。もしかしたら、動けるまでには相当な苦労をするかもしれないと、気を引き締め直しました。

 

著:ホーリー 乳がんの妻を持つ地方公務員

 

 

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