妻のがん体験記【あるあるその7】~『生きづらさ』の壁にぶつかる②~

2021年12月6日

おはようございます。木曜日担当のホーリーです。

前回までのお話はこちらから

 

自分のがん罹患を公表したことで、それまで知り合うことのなかった人との出会いも生まれました。同じがんの治療を行う人たちです。

 

がんの種類は様々ですし、性別や社会的な地位も、治療方法も背負う境遇も皆違いますが、『生きづらさ』の壁、というものの理解では多くを語らずとも伝わり合うようでした。

 

善意の第三者的な人達の物言いや、無意識の上下関係、病人と健常者、強いものと弱いものというある日急に現れる目の前の線引きなど、がんと告知された後に起こることは皆同じなようで、それに心を痛めている人達が妻の他にも大勢いることが分かりました。

 

それだけではなく、明らかな悪意を持って接してくる人間というのも、必ずいるのだという恐ろしい事実も判明してきます。

 

ある人は、直属の上司が治療や体力の衰えに全く理解を示さず、むしろそれを知って逆に追い打ちを掛けるかのように、通常でも過重と思われる業務を強いられたそうです。その職場はとある官公庁だそうで、そのようなことが最もあってはならない人達の集まりだそうです。

 

このことが公になれば大問題かと思われますが、やってる側としては、弱い立場なので抑え込めるとでも思っているのか、それとも自分がやっていることが正義だと本気で思っているのか。しかしいずれにしても、それはがん患者に対する無理解と悪意以外の何ものでもないと言っていいでしょう。

 

他にも、使えない人間は置いておけないという言葉ひとつで解雇通告を受けたであるとか、ちょっと信じられないような話が複数あり、がんの人達が感じる『生きづらさ』の壁とは、本人たちが勝手に気に病んで勝手に作り出しているものなどでは決してない、無関心であるとか、思い込みであるとか、そういった無意識レベルのものも含めて出来上がるのだとはっきり分かりました。

 

それは、家族や、友人や、職場やもっと言えば社会が、他人事と思わないで向き合わなければならないことで、私も妻を通して沢山の気付きを貰いました。

 

これは、がんに限ったことではなく、例えば他の病気や怪我、育児休暇や介護休暇であるとか、誰にでも起こる状況ではないでしょうか。

 

そして、そういったことに対する備えというのは、職場や皆が普段から当たり前にやっておかなければならないことで、それをがんに限って特殊な事例のようにされているだけなのではないかと思います。

 

著: ホーリー  乳がんの妻を持つ地方公務員

ページトップへ