妻のがん体験記 【あるあるその3】 ~全然元気なことに驚く~
2021年8月10日
看護師さんによる今後の説明を終え、いよいよ抗がん剤の治療が始まりました。
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今となっては恥ずかしい話ですが、その頃の私にとっての抗がん剤治療のイメージも、ドラマでよく見るまさにそれのままでした。
本人が猛烈な吐き気に襲われている、苦しんでいる姿を勝手に想像し、心を痛めたりしていました。それとともに痩せ細り、顔色も悪くなり、髪もどんどん抜け落ちていくという。ある程度、治療について調べ学んだにも関わらず、描いているのはひと昔前のごくごくベタな展開だったのです。
ところが、それをあざ笑うかのように、本人は至って元気そのものでした。
治療前と全く変わらないスケジュールで仕事もこなしていましたし、積極的に出掛けていました。プライベートではダンス等、普通に運動にも参加していました。むしろ、治療前よりいきいきしているかのような。
その様子に驚き、嬉しく思うと同時に、自分もいつの間にか、「がん患者はこういうもの」という決めつけを行っていたんだと気付きました。そういう決めつけが彼女を苦しめていると分かっていながら、自分がその同じ側にまんまと立ってしまっていた。とても申し訳なく、反省しました。
やはり、一度植え付けられたイメージというものは、なかなか払拭できないものなんだなあと。無意識レベルで『当たり前』になってしまうということが、本当に怖いなと改めて感じたのでした。
一度目の抗がん剤から2週間が経とうとし、二度目の抗がん剤の日が目前に迫っても、特に大きな変化はありませんでした。多少の吐き気はあったようですが、吐き気止めをすでに処方されており、症状が酷くなる前、何となく予兆があった時点ですぐ飲むように指導も受けていました。薬の数は結構多く、その他便秘薬や鎮痛剤、胃薬的なものなどたくさん渡されていました。ひと昔前の考え方だと、「医者に薬漬けにされている」などといった話にされそうですが、今の考え方は、「いかに生活の質を落とさないか」に重きが置かれているそうです。
この医療側の考え方を見ても、「病気なんだからおとなしくしてろ」「辛いのは当たり前なんだから耐えろ」ではないことが分かりました。がんの治療をしていても、いかにそれまでの日常を失わないか、今までとなるべく同じ生活を送れるか。それが方針であり、理想だということだと思います。
ただ、それにはやはり周りの人達の理解、その上でのサポートが必ず必要になってくるということも、その後の妻の変化を見て痛感させられることになりました。
著:ホーリー 地方公務員