言葉を紡ぐ、そして伝える

2025年7月30日

こんにちは。
学生ボランティアの松本真依です。
先日、第三回奏ミーティングが開催されました。
今回のテーマは「言葉」
誰かの言葉で傷ついたことがあるか、または自分の発言で傷つけてしまったかもしれないと思ったことはあるかなどとさまざまな視点でディスカッションが行われました。

言葉のさまざまな側面

近年SNSの発展により誰とでもいつでもどこにいても繋がれるようになりましたが、その一方で誹謗中傷という新たな課題も出てきました
明確な悪意があることもあれば、個人的な意見を言ったことが、自分の中にある無意識の偏見が、相手を傷つけてしまうこともあります。
実際に、がん患者さんも学生たちも約8割の方が誰かの言葉で傷ついた経験があるという事前アンケートの結果が出ました。
今回のミーティングで「頑張れ」という言葉について、気軽に言いにくいという声が上がりました。
確かに「頑張れ」と言われても、もう充分頑張っているよ!と私も思ったことがあります。
また、「頑張れ」という言葉に対してある参加者さんは「今までの頑張りを認めてもらえていないように感じてしまう」「プレッシャーに感じてしまう」という意見もあり、相手を気遣ったつもりの言葉が、なかなか相手の心にうまく届かないこともあるのだと実感しました。
だからこそ言葉のリフレーミングを大切にしているという参加者さんの声もあり、相手に合わせた言葉をかけるためには、まずは自分事として考えるということが重要だと学びました。

学生視点から考える病気に対する声掛け

病気に対する声掛けを学生視点で自分事として考えた時に、コロナウイルスに感染した時のエピソードを話してくださった学生さんがいらっしゃいました。
「コロナウイルスが流行った当初に感染し、復帰するときに学校でなんて言われるのか不安だったけど、何も言うことなく全力でサポートしてくれたのが嬉しかった。行動が嬉しかった。」
私はこのお話を聞いてがんや大きな病気があってもなくても、コロナウイルスのあの時期は誰でも社会のスティグマ(差別や偏見)の対象になりやすかったことを思い出しました。特にあの頃の学校という閉鎖的な空間は、ものすごくピリピリしていましたね。
言葉をかけることだけではなく、行動が言葉に代わることもあることに気付かされました。

頑張ってね!よりも頑張ろう!

ミーティングの最後に理事である下澤さんが、「頑張ってね!と言いたいときは頑張ろう!」と言い換えるようにしていることを教えてくださいました。
確かに私も、精神的にしんどかった時期に祖父から「おじいちゃんも頑張るから真依も一緒に頑張ろうよ~」と言われその後大号泣したことを思い出しました。(笑)
また、学校がイヤだな~と思った時には「私も頑張って来るからさ、明日も一緒に頑張ろう!」と言ってくれた友達がいて頑張れたことも思い出しました。
そして今までの頑張りを認めてもらえる言葉もうれしいという意見も上がり、例えば「よくここまで頑張ったよ!」や「ここまでこられたのだから大丈夫!」などこれからのことではなく、これまでの頑張りを認めてもらえる言葉は素敵だなと感じました。
言葉って難しいけど、誰かの何げない一言に勇気づけられて、大丈夫だ!と思えたり、もう
ちょっと頑張ろう、また会いたいなどと、言葉があるから人の感情は揺れ動くし豊かになっていくものだと私は思っています。
話題が尽きないテーマで、正解もないように思えるけど確かな力はあると感じます。
よく理事の堀越さんは、「話す前に相手の状況などを自分事として捉え、自分の中で問いを立て考えることで、相手のことを無神経に傷つけることが無くなると思う。だからこそ、それを習慣化してほしい」と教えてくださいます。
日々コミュニケーションを取る上で考えすぎてしまったり、後から不安になったりすることもあるけれど、このことを知っているだけでも前向きにさまざまな人たちと自信をもってコミュニケーションが取れるなといつも勇気付けられます。

言葉と感情

以上のことから分かるように、言葉と感情は双方的に影響を与え合う関係にあります。
どの時代でも言葉をどう使うのか、どう相手に受け取られるのかなどの悩みや誤解は常にあったといわれています。
古代ギリシャのソクラテスは、「言葉は心理を正しく伝えられるのか」という問題を探求しており、フロイトは「無意識は言葉では完全に表せない」と指摘しています。
現代ではチャットをはじめとした言葉を伝える非対面コミュニケーションツールの登場、多様性と言葉のバランスなどがあり、ますます難しくなっていく問題になるでしょう。
どんなに技術が発展していっても、人それぞれの感情が存在する限り伝え方を間違えないようにすることは難しいのだろうなと私は思います。
今回のミーティングでは言葉の難しさを感じつつ、学ぶことも多く、掛けられて嬉しかった言葉も思い出すことができて、とても濃い時間になりました。そして参加者の皆さんそれぞれの優しさや気遣いを知り、温かい気持ちになりました。

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