第4回奏ミーティング 天野慎介氏ご講演内容

2025年8月19日

ピュアスマイルスタジオ学生会員の武田悠斗です。
8月15日に行われたリアル奏ミーティングでの天野慎介さんのお話をまとめました。

自己紹介

27歳の時に血液 がんの悪性リンパ 腫と診断され 、薬物療法 、放射線療法 、自家末梢血管細胞移植 、2度の再発を経験 。自身の経験をもとにがん患者支援団体の活動に携わり 、厚生労働省や医療機関 、大学等で委員をしている 。

がん患者が経験する悩みとそれに対する支援

がんと 診断されると1番 は 命のことが 心配 になるが、それだけでなくそれぞれ年齢や環境に応じてたくさんの不安を抱えることになるため、がん患者に対する意思決定支援のような精神的なサポートや 就労支援 、学習支援が必要である。

高額療養費制度と上限引き上げに関する一連の出来事

高額療養費制度とは 、 医療費がひと月で 一定の金額を超えた場合 、 超えた分が 支給されるという制度 。例えば 、一般的な所得の人であれば月額の上限はおよそ8万 円であり、それ以上は支払わなくてよい ということになる 。しかし財政の悪化によりさまざまな議論がなされ 、昨年12月に上限の引き上が 決定された。それに対しがん患者支援団体は 、このニュースが出る直前に負担の上限の引き上げをやめ るよう要望書を出したが、メディアに取り上げられることは 少なく 、そのまま引き上げが行われそうな 雰囲気になってしまった。そこで、SNSを活用したり 、患者に対して行った上限引き上げによる影響関するアンケートの結果をもとに 高額療養費の上限引き上げがどれほど患者の負担を大きくするのかについて訴えたりすることで 、 世の中の注目を集めることに 成功した 。これを受けて与野党各党が動き出し 、 国会でも取り上げられるようになった。 その後 、 厚生労働大臣や与野党各党の代表などの多くの議員との面談 、そして首相との面談が実現し 、 一度上限の引き上げを停止することが決定された 。

高額療養費の上限 引き上げがなぜこんなにも大きな問題になっているのか

1つはがんの治療法の進歩が挙げられる 。 白血病やリンパ腫などの血液がんに高い効果 を示すことが 知られているCAR T細胞療法は革新的な治療法ではあるが 、薬価 が3000万円程度と非常に高額である。 高額療養費制度があることで50~100万円 程度で治療が受けられるが 、残りの金額は社会保険料から支払われているというのが事実であ り、これをどうしていくかが課題になっている 。
日本では薬事承認 されれば自動的に保険適用されるが 実はそのような国は珍し く、イギリスのように薬事承認と保険適用は別の話だという国が多い 。日本は保険適用する時に、薬をたくさん買いたたいてできるだけ薬の値段が安くなるようにしている 。 そのため、製薬企業が日本での販売をさけるようになり、日本に薬が入ってくるのが遅れるドラッグラグや、そもそも日本に薬が入ってこないドラッグロスが起こっている。
がんや難病に対する薬として、飲み続ける、あるいは投与し続ける限りは進行を抑えることができるものが今後どんどん増えていくことが期待されるが、長期の治療になると経済的な負担が大きくなる。ここでも、高額療養費制度があることで負担を軽減することができる。
高額療養費制度について、仮に年収650万の方がいたとすると、現在の現在の上限は月額80100円プラス1%だが、政府案通りに引き上げられると上限が月額138600円になる。これが月1回ならまだ良い。しかし、過去1年間の間に3回上限に達すると4回目からは上限額が下がる多数回該当というしくみがあり、その場合は上限が80100円から44000円になるはずだが、政府案通りに引き上げられると、76800円になる。このように医療費が毎月3万円引き上がると生活が厳しくなる人も多くいるのが事実だ。
そうはいっても、社会保障などの現役世代の負担を考えると、今後は高額療養費制度があるべきだとは限らない。それぞれの政党によって高額療養費制度に関する意見はばらばらで、この問題に関しては何が正解なのかわからない。ただ、今後どうしていくべきなのかについて若い世代に考えてほしい。

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