父のがん闘病記5: ~父の異変の始まり~
2021年7月22日
声優の遠藤章史です。
2月1日から10日、3月1日から10日と2回の抗がん剤治療をした後、4月8日に手術をして、膀胱の全摘手術をするというスケジュールとなっていました。
手術が終わると、お腹の右前か左前の2箇所または1ヶ所にストーマという器具をつけ、尿をそこから排出するというもの。腎臓は二つありますから、うまくつなげられれば、一つで済む。まあ、距離が届くかどうかという問題ですね。膀胱を失うわけなので腎臓から直接、ストーマへ尿がたまるという仕組み。当然、後処理処理とケアも必要となります。
しかし、この器具は一つで2000円弱と高く、介護保険が使えるとはいえ、なかなか値の張る出費。しかもある程度の時間で尿がたまるので、家族がストーマを外し、尿を捨てて、幹部も清潔に保たなければならず、ケアも楽ではありません。それでも命が助かってガンを全て取り除いて元気になれるだけで儲けものです。
そして、いよいよ2月1日、第一回目の抗がん剤治療が始まったのです。
父には長時間じっとしているのが相当辛かったみたいで、もう限界だったと言っていたのを今でも覚えています。抗がん剤は毎日ではありませんが
ガイドラインに沿って規定通りの数を打ちました。
この規定というのが曲者です。ガイドラインに決められているとはいえ、父の体には明らかに負担が大きかったことがあとになってわかるのです。
若い人には耐えられても、高齢の父には打つべきではなかったと今でも悔やんでいます。母がもしガンになった場合は、抗ガン剤は打たせません。
しかし、これは、それぞれの考え方があり、ご自身の判断で打ってもいいと思います。
ただし、私の家族は、この先、私とは母はガンにかかっても打たないというだけです。
さて、入院は10日間ですから、洗濯物も出ます。取りに行く前から聞いてはいましたが、看護師さんか、わざわざ、メモをつけてくれました。しかも、すべて、ビニールに入ってました。ここには注意書きがありました。「絶対に素手でさわらないこと」。つまりはゴム手袋などを使って洗濯機に入れろという意味です。それと二度洗いしてくださいと。そんなに強力なんだとは思いましたが、いま考えると抗がん剤のその強い殺菌力は半端ないなと強く感じています。
そして、父が帰宅しました。
入院する前と変わらず生活していました。この時の父は自分の部屋が2階の和室でした。
しかし、ある時、父が変なことを言いました。
夜中に玄関の戸をドンドン叩く音がするから、降りていって、ドアを開けたら、誰もいなかったんだよと言った。父は耳が遠いし、私の部屋も同じ2階でしたので、そんな物音は、父が気がつくなら私の方が先に気づいています。
そうなんです。明らかに幻聴です。
抗がん剤の影響かなと思いました。
2月の終わりに通いで抗がん剤を打つ予定でしたが、血液の数値がよくないということで、中止になりました。その時に、話を聞いてくれた女医さんに、抗がん剤を打って、幻聴があったという例はないですねと言われ、じゃあなんなんだろうなと。ここでしっかりガン治療のことを調べておけば、現状も違っていたかもしれませんか、後の祭りです。
この後、高齢者の抗がん剤を打つ場合のリスクが、明確な形となって現れるのでした。
皆様にはその激変ぶりを知っておいていただきたいと思います。
著:遠藤章史
ナレーションを中心に芸能の仕事をさせていただいています。昨年から自宅録音での納品もしており、朗読、ナレーション、YouTubeやツイッターやブログ、フェイスブックなどのSNSでも発信中。父の膀胱がんが発覚してから様々な意見を取り入れながら思案・行動してます。父は認知症も患っており、排泄の粗相や、夜中と早朝の徘徊、時間に関係なく、人を呼ぶようになり、自宅での介護を断念。ショートステイを繰り返していましたが、現在は老人介護保険施設に入居しております。父の体力の回復、ガンと、どううまく付き合っていかせるかを模索中の毎日です。