妻のがん体験記【あるあるその2】 ~「善意」というものが分からなくなる②~
2021年7月26日
月曜日は、乳がんの妻をもつホーリーさんの連載です。
「仕事ばかりしているから」、「体にいいものを採っていない」、「もっと健康的な生活を送らなきゃ」。まあここぞとばかりに来ましたね、いろいろなアドバイスが。笑っているのが一番、それはもちろんそうだと思います。NK細胞の話なんかもありますしね。しかしそうはいきませんよね、誰しもが。おかしくもないのに笑えるかって。
一番厄介だったのは、やはり根拠のない抗がん剤批判、あるいは医者や病院に対する悪評でしょうか。中には現代の医療自体の否定のようなものまでありました。
抗がん剤に関しては、もちろんいろいろな考え方もあるでしょうし、体質やがんの特性によって効果は違ってくるのかもしれません。医者の言うことが全て正しいわけではないというのも理解できますし、実際私も最初に主治医と会った時にはかなり強い不信感を抱きました。
でも、何が正しい、誰が間違っているなどということは、然程そのことを知っているわけでもないその頃の我々からすれば判断のしようもない話なわけです。抗がん剤が効かないと証明されている、と言ってきた人間もいました。ではその証明とは?と問うと、ある特定の人たちが示している研究結果らしいと。そしてそれを言っている本人は、その研究結果がいつ、どこで、誰がどのような積み重ねの下に導き出したのかすら実際には分かっていない。「そう聞いてる」「そう書いてあった」ってだけなのです。がんに携わる、世界中の医療関係者の長きに渡る積み重ねと、その曖昧なものとを比べ挙句こちらを信じろと言われても、当然納得出来るわけがない。
だって結局のところ、それを言っている人たちは何の責任も取ってくれませんもんね。それでがんが進行し、その時は初期だったものが末期と呼ばれる状態になったとしても、それはあくまで信じた側の責任、『任意』、ってことです。「良かれと思って」で、済んでしまう話なんですよね、そうなってすら。結構怖い話だなって、思いました。
スピリチュアル的な方面から、なんじゃそりゃ、ってものまで。中には「重曹を飲め」とかっていう、本気で言ってんのレベルのものまでありました。これが毎日のように、様々な人間から飛んで来るとなれば、もう「善意」だからなどと言ってられないわけです。自分としては、妻がいかに少ない負担でがんを克服できるかが最重要事項なのです。なので、まずは自分が、これから妻が受ける治療、がんのタイプや抗がん剤の種類、そういったことをきちんと勉強して理解し、根拠という『盾』をつくらなければならないと、強い危機感とともに思ったのです。
著: ホーリー 地方公務員