多様な寄り添い方を学んで

2025年12月4日

今回は精神科医の先生にお話を伺い、「寄り添い」について改めて考える貴重な機会となりました。私たちは活動開始以来、「患者さんにどう寄り添えるのか」をテーマに対話を重ねてきましたが、心の病を専門とする先生から直接お話を聞くことは、緊張感と同時に大きな学びを得られる時間でした。

先生からはじめて「ラポール」という言葉を教わりました。フランス語で「架け橋」を意味し、信頼関係と共感が成立している状態を指す心理学の概念です。そして、このラポールを形成する上で鍵となるのが「傾聴」と「受容」の使い分けだと教わりました

傾聴とは、相手の声の背景にある感情や意味を理解しようと耳を傾けること。受容とは、相手の考えや感情を善悪の判断なしにそのまま受け止めることです。一見どちらも寄り添う上で必要な姿勢ですが、実際には状況によって適切に使い分けなければ、かえって悪い方向に進むこともあると知りました。

例えば、患者さんが治療関係を悪用しようとする場合や、自殺リスクが高いケースでは、ただ話を聞いているだけでは安全を守れません。必要なときには専門的判断に基づいて方向づけることが不可欠です。

この話から、「寄り添う」とは単に受け止めることではなく、最終的にその人が自立して生きていけるよう導くことだと気づかされました。

私は相談の流れで、父と母の精神疾患について先生に尋ねました。どのように支えればよいかアドバイスをいただけると思っていましたが、返ってきた言葉は意外なものでした。

「あなたは今、目の前にあることを頑張りなさい。自分の人生をしっかり生きることが、ご両親への一番の安心になる。」

その瞬間、胸の奥がほどけるようで、思わず涙が出そうになりました。長い間抱えてきた重荷がふっと軽くなる感覚でした。

そして、「私が今できることは、学びを積み重ねることだ」と素直に思え、その日からこれまで以上に学業に専念できるようになりました。

先生の言葉に救われた経験を通して、私も誰かにとっての「支え」になれる人間になりたいと感じました。寄り添うとは傾聴だけではなく、ときには正しい方向へそっと導くことでもある。この学びを胸に、これから出会う患者さんに寄り添える医療者を目指したいです。

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