パパの、がんと仕事・子育て奮闘記15 ~がん研有明病院入院&すぐ退院して通院治療開始~
2022年6月14日
こんにちは。
火曜日担当、ピュアスマイルスタジオの理事の長尾です。
2014年3月3日 がん研有明病院
今日は雛祭り。そして私の入院の日。綾音の為に小さな雛人形を机に飾っておいた。うちの姫は行動がのろく朝出掛ける時はいつもバタバタ。遅刻するから急げと声をかけてやっと送り出しと思ったら、完全に遅刻の時間に戻ってきた。
靴を履き間違えたらしい。しかしその間違えが問題。
一昨日子供達と靴を買いに行った。綾音は足が大きいので男物のシューズを買った。それがかっこいいので私も同じものを買った。私のは28.5cmのデカイ靴である。
うちの姫は右足を自分の靴、左足を私の28.5cmでお出かけ。チョットぶかぶかだなあと思ったらしいけれどすぐに気がつかないのが超人的。大物になる。・・・・すでに足は大物(*^^*)
その話を看護師のお姉さん達に話したら受けていた。
病院では検査が沢山あり、薬や副作用などの説明、書類などもかなりあり疲れた。明日から化学療法と放射線のダブルの治療が始まる。体調管理に努めます。
2014年3月6日
がん研有明病院(以下がん研)の入院が3/3から10日くらいと言われていたが調子がいいので明日3/7退院になった。後は平日に通院で放射線治療をのべ33回やって終了。4/18に終了の予定。
喉の渇きが少し出てきたので食事もそのうち味がわからなくなると思う。
午後古い友人で共同テレビジョンで一緒に仕事をしていたカメラマン仲間のYさんがお見舞いに来てくれた。
昔話や現在の仕事のこと、身内や知り合いの方々の病気のことなども含めて色々話して有意義なひと時を過ごせた。
彼にはマルチカメラの仕事などで時々手伝ってもらっている。Yさんは明日からTVの取材でアイルランドに出張なので気をつけて行って欲しい。
夕方綾音が来てくれた。夕食を一緒に取り、学校の話などをして30分ほど勉強をやった。先日の私のシューズを間違えて履いて小学校を遅刻した話をFBや小学校の副校長先生に伝えたと言ったら、えーと言いながらあっけらかんとしていた娘です。
2014年3月7日
今日がん研を退院した。
昼にがん研の病理部で長年勤務されているNさんと久しぶりにお会いした。大塚にがん研がある頃からの知り合いでマラソンなど運動にも精を出しておられる。私も随分前に一度がん研のマラソン部のメンバーに混ぜていただいてNさん達と走った思い出がある。病院すぐ前のホテルのレストランでランチをご馳走になり近況報告や色々なことを話して楽しいひと時を過ごした。Nさん、ありがとうございました。
家に帰ってから17時前に品川税務署に自転車で行く。(家から15分くらい。健康的で移動は車より遥かにはかどる)
その後銀行や世話になっている会社の挨拶廻りをし、帰りに青物横丁のOKストアに立ち寄り退院祝いで刺身を3パック買って家族で食べた。もちろん30%Offのものである。今日はゆっくり休み、社会復帰します(*^^*)
以上が当時の様子です。
当初NTT東日本関東病院(以下、関東病院)で放射線治療を行うつもりでした。しかし前回お伝えした通り、当時関東病院に設置してあった放射線の機械はどうしても放射する部分に未照射の部分が数センチ出るとのことで、再発のリスクがありセカンドオピニオンで受診したがん研で治療することとしました。
実は、ここで迷ったことがありました。
先進医療について以前CXでディレクターをして、現在はテレ朝でディレクターをしている知人の河原一久さんから治療について当時いろいろアドバイスをもらっていました。
放射線治療に関しては、X線治療ではどうしてもがん細胞以外の細胞にもダメージを与えるため、先進医療の中でも重粒子線治療や陽子線治療などができるのならがん細胞に対してピンポイントで照射してがんを死滅させることができるので良いとのことです。
今日このブログについて河原さんに連絡をしたところ、当時先進技術としてマスコミにも取り上げられかけてきたものですがなぜくわしかったという理由を教えてくれました。河原さんは、当時作家・作詞家で有名な「なかにし礼」さんの闘病記「生きる力」「闘う力」「がんに生きる」の手伝いをしていたので、医療面について裏取りも含めてリサーチしていたとのこでした。河原さんは現在、ディレクターの他、作家、放送作家、映画評論家などでも活躍しています。スターウォーズに関しては第一人者としてNHK出版から著作が出ています。
先進医療は自由診療です。先進医療付きの医療保険に加入していれば保険で対応できますが、300万程度かかります。私は都民共済で医療特約を追加で1口入っていました。1口150万まで補償です。2口入っていたら300万まで出ますが、自腹で150万というのは悩ましいところです。そして、当時東京に重粒子線や陽子線治療の行えるところはなく、千葉の国立がん研センター東病院が一番近いところでした。現在は増えてきましたがまだまだ少ない。
私の場合はがん研で治療しようと思っていましたが、先進治療も心が動きました。
私にとっては千葉の国立がん研で治療となるとサードオピニオンです。まず今の予約をキャンセルしてからサードオピニオンとして受信して先進医療に適しているか判断してもらう必要があります。そして先進医療でいけると判断された場合、その時点から治療の予約をすることになります。人気の治療なのでまとまった予約をとるのに時間がかかります。つまり、待つことが余儀なくされて社会復帰の予定が立たないということです。千葉なので33回全部入院となる可能性が出てきますので子供たちと会うことも難しくなります。シングルの家庭では厳しい状況と思われます。
大変悩みました。悩んだ点を以下列挙します。
先進医療の放射線治療(重粒子線や陽子線治療など)
メリット
がんの組織にピンポイントで放射線照射できるので、他の臓器や皮膚などに影響が少ない。治療の身体の負担が少なく治りも早い。皮膚の変色が放射線より少ない。
治療時間が短い(病院に行って55分セッティングで5分照射)
デメリット
治療費が高額
先進治療機械が設置してある病院が少ない。該当する病院が近くにない時は、治療のためには通院で往復に長時間かかる。長期間の通院治療は仕事に支障をきたすことが想定される。遠方により通院ができない場合は入院を余儀なくされるなど、生活スタイルが限定されることもある。
通常の放射線治療
メリット
保険適用で治療が出来て医療費が安い。放射線治療を行う病院は全国各地にあり通院が可能。
デメリット
放射線治療では、正常な細胞までダメージを与える範囲がでてくる。放射線照射により皮膚の色は浅黒く変色する。1年くらいで色はだいぶ落ちて2~3年でほとんど元の色に戻る(個人差あり)
共通すること
治療は完璧ではないのでどんな機械を使っても再発のリスクゼロはない。
がん保険は有効。先進医療特約も安い掛け金で、入院も含めカバーされるものが多い(最近は、月100円程度の掛け金で2000万円ついてるものが多い)
これらのことを考えて、私はがん研有明病院で治療することに決めました。これは即決ではなく2日くらい迷いました。
治療が確定したら後は、予定に従って治療を進めるのみです。
関東病院からがん研に転院していますので、その時にすでに放射線治療の開始は少し遅れました。33回の放射線治療ですが、はじめ1週間程度入院し、検査や治療を行います。私は虫歯があったので、治療をして虫歯が深かった奥歯を抜きました。歯の土台が放射線で傷みやすくなっているので治療がむずかしくなるので抜くことが見込まれる歯は事前に抜くのが当時の方法でした。
それから喉に放射線が当たらないようにするためのマウスピースと、放射線を当てている時に頭を固定するためのワイヤーでできた固定用のマスクを作りました。エジプトのツタンカーメメン王になったような気分でした。無理やりそう思って楽しみました。頭の中を流れる空想のBGMはオペラ「アイーダ」です。
360度ぐるっと回る機械は「キーン、ガタガタガタ」と大きな音がしますが慣れてくると睡魔に負けて寝てしまいます。
放射線治療をする前に数回化学療法がありました。これは放射線治療開始まで、転院などにより少し時間が空いたので治療効果を高めるために行われたものです。
放射線治療は、はじめの入院時から数回やって、後は通院で大丈夫でした。私の家は品川シーサイド駅から7分くらいなので、臨海線で1本で臨海線の国際展示場駅まで3駅で直行できるのでドアツードアで30分程度で便利でした。
私は外科医&介護老人保健施設はまなす施設長の福田六花さんとバンド仲間です。Vo+Gt六花さん、Sax栗栖幸喜さん、Kb私でセンセーションズという名前を作り、時々ライブをしていました。初めてのライブが鈴ヶ森中吹奏楽部コンサートのゲストで、その後メンバーを増やし不定期ライブをしていました。
六花さんが以前癌研究会癌研究所(東京都豊島区)で働いていた時には、バンドのメンバーとがん研の先生たちと一緒にマラソン大会に出たことがあります。その時に作って汗を流した想い出のユニフォームがこの写真です。
私は母ゆずりでギャグが好きですが、六花さんもけっこうギャグが好きです。楽しく過ごすということはとても大切で病気や落ち込んだ時こそ、自分のことを見つめる機会が得られてラッキーと思えるくらい前向きにしています。リンパが腫れてステージ4と言われた時もガクっとはしましたが、治る確率もまあまああるから暗いのは損だと思って過ごしています。結構むりやりでもいいじゃないかと思っています。
大好きな樹木希林さんは全身がんでもくよくよせず、ちゃんと九州まで治療に出かけて病気にしっかり向き合った上で、最後までひょうひょうと自分らしく見事に生きられました。
次回の話はこちら「パパの、がんと仕事・子育て奮闘記16 ~通院治療、仕事、子育て~」
著:長尾聖生(きよみ) NPO法人ピュアスマイルスタジオ理事
私は21歳と19歳の大学生の子供をもつ、がん経験者のシングルパパです。私は東京都の公立中学校で非常勤講師として音楽の教師を30年以上続けて、株式会社オール・コレクトを作りTV番組や音楽関係の撮影・編集の仕事も同じく続けています。マライア・キャリーからオーケストラ撮影・TV撮影・CM・YouTube配信など守備範囲は広範!